2000年に消費者からのお問い合わせに対応する窓口として設立された、貝印のお客様相談室。購入した商品の使い方といった質問はもちろん、苦情や意見など、1日に約120件ものさまざまな声が寄せられている。貝印が直接、お客様とつながる部署として担う役割は、決して質問やクレームの処理だけではない。近年は消費者から生の声を集める、マーケティング的な側面も重要と語る、室長の岩田全弘さん。
「インターネットや路上でのアンケートではだいたいの方が良いことしか言いませんが、お客様相談室に電話をかけてくる人たちは常に本音をぶつけてくる。それは非常に新鮮な意見です。だから『こういった商品はありますか?』といった問いに、取り扱いがない場合にも『ありません』とただ返答するのではなく『どのように使うのですか?』『何を見られたのですか?』とお聞きして付加情報を得るように心がけている。我々が扱っていない商品で消費者が真に求めているものは何なのか、それが後々のヒット商品につながるかもしれない。例え批判的な内容であったとしても
〝苦情〟でなく〝情報〟として捉え、活かせるようにするのが我々相談室の使命です」。
電話をしてくるのは主に貝印に期待するファン。苦情もあるが、お褒めの言葉をいただくことも多い。今まで約3分以内が常だった通話も、最近は時間を多く取り、より具体的な情報を集められるようになった。また、その内容を素早く必要とする部署に届けられるよう、2016年5月、社内閲覧システムを公開。情報をすぐに閲覧できるだけでなく、年代別、商品別、問い合わせ内容別などで分類・分析し、商品開発の改善に活かせるようになってきた。
「今まではそれぞれの担当者が文字情報からその都度、該当する内容を拾ってデータを作成していましたが、新システムなら必要な情報をヴィジュアライズし、タイムリーに閲覧できる。将来的には商品についてつぶやかれたSNSの書き込みまでシステムで拾っていくなど、相談室に電話を掛けてこないサイレントカスタマーの意見も取り入れられればと考えています」。