2018年入社

知的財産 / 取締役 /
CIPO / CLO

地曵 慶一

PROFILE

地曵 慶一

地曵 慶一

学部
School of law
学科
IP LL.M.
出身地
千葉県
趣味
少年野球のコーチ
特技
少年野球の審判

インタビューINTERVIEW

大手日用品メーカーで
知的財産に関する業務を担当

まだ私が子どもの頃、父親の同僚が自宅に遊びに来たことがありました。その方はご自分が会社で開発したアイデアが特許として認められた場合のメリットや、どうやって取得するのかなど、私に特許がどういうものかを熱心に教えてくれました。
その話がおもしろく、ワクワクした気分で話を聞いていたことを覚えています。
このことが、私が現在も仕事としている知的財産の道へと進むきっかけとなりました。

大学では工業所有権に関するゼミに入りました。なお、私が大学に進学した当時は、まだ知的財産という言葉がありませんでした。
就職活動では、特許や工業所有権に関わる業務を新卒でも携わらせてもらえる会社を探し、1994年に大手日用品メーカーに就職しました。以来、知的財産に関する業務に約25年間携わっておりますが、その間、知的財産という言葉が日本に生まれ、そして、発展するまっただ中で仕事をしてきました。
そして、2018年4月から貝印で、やはり知財や法務にかかわる仕事をしています。

知的財産を活かしきれない
日本の現状

私が社会人になった頃、多くの日本企業は知的財産に対する意識が低く、その点、海外の企業に対して劣勢でした。
2002年、“知財立国”が宣言され、知的財産基本法が成立。知財をレバレッジに日本全体を改革しようというムーヴメントが起こります。
学術団体や専門家団体も多く誕生し、さまざまな教育が行われました。その中で私も学習の機会を得て、University of Washingtonに留学します。その時の友人は現在でも世界の知財を牽引しています。

しかし、2008年、世界を震撼させたリーマンショックが起こり、その影響で多くの日本企業は研究開発に以前ほど力を注げなくなり、付随して特許出願件数もリーマンショック前より大幅に減ってしまい、知財熱が全体的に下がることに繋がってしまいました。
それでも、知的財産を重要視する意識や活動は日本の企業でも根強く育ってきてはいましたが、以前のような勢いはなく、特に、知財をうまくハンドリング/マネジメントできる人材が圧倒的に少ないことは大きな課題だと思います。
学校教育でも特許などを学ぶ機会が多くなってきたので、それらが大切であることはなんとなく知っているけれど、どう活用すればいいのかわからない。それが現在の日本だと感じています。

管理するのではなく
知財を活用する

貝印に転職したのち、私は、まず会社全体の、知財に対する意識を変えることに取り組みました。
私が入社する前まで、知財は「管理本部 特許室」が扱っていました。つまり知財は“管理”するものであり、扱う知財も特許権などの権利がメイン、ということで留まっていました。
知財は管理するのではなく、正に、会社の財産として使うことで初めて真価が発揮されます。

知的財産には、“特許権”、“商標権”、“意匠権”などの「権利」のみならず、形はないけれど価値がある“無体財産”も含まれます。広く、営業秘密や技術ノウハウ、社員の能力、経営ノウハウなどがあり、ビッグデータなどデータ類も重要な知的財産です。
これら知財をプロテクトし、活用する。私が入社してから現在までの間に、知財に対してコンサバティブだった貝印の社員の意識が変わりつつあることを感じています。

新しいことを積極的に受け入れる貝印の風土

社員の意識を変えるために私が取り入れていることのひとつに、「IPランドスケープ」という手法があります。
「IPランドスケープ」とは、「IP」(Intellectual Property<知的財産>)と、景観や眺望を意味する「ランドスケープ(landscape)」を組み合わせた造語であり、知財情報にマーケティング情報など他の情報を併せて分析し先を読むことで、経営・事業・開発の戦略的な意思決定に役立てる手法として注目されています。 この手法が貝印に必要なものであると私は考え、導入することを決めました。

ただし、貝印は歴史のある会社です。これまでのやり方を大きく変えることになる私の考えは受け入れられるのか。
しかし私の不安は杞憂であることがすぐにわかりました。
貝印には、実は、新しいことを積極的に受け入れる土壌があり、私のことも好奇心を持って迎え入れてくださいました。
こうした新たな取り組みとこれまでの技術やデザイン等の実績が評価され、うれしいことに、2019年4月には平成31年度知財功労賞において“特許庁長官表彰”を受賞するに至りました。

社員が自発的に
「特許を読み込める」よう整備

「貝印は“のびしろ”のある会社です」。これは入社時に副社長から言われたことです。
それを感じた一例として、社員はいろいろなアイデアを持っていることを入社まもなく感じましたが、そのアイデアをいつ、誰に、どのように発信し具現化すればいいのかわからず迷っているようにも感じました。
せっかく「知財」が生まれかかっていてもそれが表出し昇華することなく消えていく“チャンスロス”があるように感じました。
自分のアイデアに自信が持てないことが原因のようにも思いました。

そこで、自分の考えたアイデアがどれだけ他者のアイデアに比べ差別化されているのかを見極められるように、他社・他業界の特許をより詳しく調べるためのインフラ整備を行いました。他者の特許を積極的に分析する、戦略的なミーティングの仕組みも誕生しました。
会社を変える上ではトップダウンも必要です。しかし知財という分かりづらい分野においては「知財を使うとメリットやリターンがある」と社員一人ひとりに気付いてもらうことが重要だとも考えています。
こうした現場の社員との活動が、知財を使うことの「利益」を実感してもらえることに繋がってきていると感じています。
さらに知財部門とのミーティングの前に、自発的に知財を学習するプレミーティングを行い、いろいろなアイデアを持ちこんでくれるなど、いい循環が始まりつつあり、とても嬉しく感じています。

少年野球のコーチとして
週末はグラウンド通い

私には息子が2人いまして、長男が小学2年生のときに地元の少年野球に入りました。
するとお父さんもコーチとして参加することになり、次男が主将を務めた時には、その父が監督をする慣習があったことから監督も長くやらせてもらい、これまで10年以上、少年野球に関わっています。
私は、野球の経験はありませんでした。そこで、選手の育て方や戦略・戦術を、かなり熱を入れて勉強しました。
野球チームを強くすることは、仕事のマネジメントにも通じるものがありましたので、性に合っていたのかもしれません。

例えば、ビジョンを明確にし、強みと弱みをはっきりさせたうえで強みを伸ばして弱みを克服する。まさにSWOT分析です。
そしてスケジュールを立てて、実行、評価を繰り返すPlan-Do-Seeを実践する。
以来、はまってしまい、子どもたちへのコーチングだけでなく、審判、地域の野球連盟の仕事など、ほぼ毎週末、野球場に足を運んでいます。

ベンチャー企業に就職する。
そんな気持ちで来てほしい

石橋を叩いてから渡るか、叩きながら渡るか、叩かずにとりあえず渡ってみるかは人それぞれ。
私はフットワーク軽く石橋を渡り、何かあったら動きながら修正することを好みます。そして貝印でも、フットワーク軽く動ける人と一緒に仕事ができたらと思っています。

貝印は伝統ある会社なので、安定感を求めて入社する人も多いでしょう。でもそれだと貝印がもっている“のびしろ” には気付けないかもしれません。
人は“のびしろ”が見えるとそれを活かすために何をすればいいかに気付きます。貝印には同僚でも上司でも、気付いたことを提案できる土壌があると思っています。ですから、会社を変えていきたい、自分の思ったことをどんどん発信したいという気概を持った方にはとてもおもしろい会社だと思います。
これから就職する学生の方々には、そのような意味で、ベンチャー企業に就職するくらいの気持ちで貝印を見ていただきたいですね。

SCHEDULE

スケジュール

1日のスケジュール

8:30〜 出社
9:00〜 朝礼
9:30~ メールチェック
10:00~ 部内進捗会議(知財)
12:00~ 昼食
13:30〜 部内進捗会議(法務)
15:00~ 契約書、特許明細書等
の確認と承認
17:30~ 帰宅