生活に密着した製品を
作りたくて貝印を志望
小学校4年生からバスケットボールをやっていて、大学は体育会のバスケ部に入部しました。今思い返すと、バスケに明け暮れた学生生活でした。バスケは社会人になっても続け、最終的に30歳くらいまで夢中になっていました。
学部は工学部の機械システム工学科で、塑性変形という加工の研究をしていました。
仲間の多くは自動車関連の会社を志望していましたが、私は生活に密着した身近な製品を作るメーカーで働きたいと考えていました。
というのも私は大学から一人暮らしを始め、料理が好きだったこともあり積極的に自炊をしていました。それもあり調理器具のメーカーを調べる中で貝印に出会いました。
私の面接を担当してくださった方は「うちだと塑性加工の工程はあまりない」と話していました。
でも私は大学で学んだこと以外も経験したかったこと、そして大学で学んだことは直接ではなくても仕事で役立つと思い、ぜひ貝印に入社したいと話しました。
相反するものを両立させる
カミソリという製品の奥深さ
入社後は技術部に配属。まず包丁を生産する工場の生産技術を6年担当し、工場への設備導入や設備の改善、新製品の立ち上げを担当しました。その後は現在までカミソリの刃を作る工場の生産技術を担当しています。カミソリに関わるようになって、もう12年以上経ちました。
他のメンバーは数年単位で担当する製品が変わるケースが多いので、私のように一つの領域を長く担当するのは珍しいかもしれません。
刃物は多くの製造工程を経て一つの製品になります。短期間だとどうしても一部の工程しか理解できないことも多くなります。おかげさまで私はカミソリに関してはすべての工程を把握できました。自分でもスペシャリストと名乗ってもいいのかなと思っています。
カミソリには他の刃物とは異なる奥深さがあると感じます。
なぜならカミソリは薄い刃で固いひげをスパッと切りながらも、肌にはやさしくなければいけません。
カミソリには矛盾する要素を両立させる技術が必要なので、今でも新しい発見があります。そこがこの仕事の面白さですね。
社運をかけた
ビッグプロジェクトに参加
2018年、小屋名に新工場が竣工しました。私は生産技術の仕事をしながら、そのプロジェクトに参加しました。
プロジェクトには関連する部署からメンバーが参加。スタートから竣工まで3年を要するビッグプロジェクトです。
これまで経験したことがない業務ということもあり、最初はとまどいが大きかったですね。ゼネコンとの打ち合わせでは、建築に関する専門用語が飛び交います。それでも滅多に経験できることでないので、ついていこうと必死になりました。
3年と聞くと長く感じるかもしれませんが、実際はかなりタイトなスケジュールです。どこかの工程で少しでも遅れが発生すると製品の生産スケジュールに影響が出てしまうので、このプロジェクトは常に緊張感との闘いでした。
建屋が完成し、機械を搬入し、すべての動作確認を終えた時の安堵感は言葉に表すことができません。
私はずっと刃物に向き合ってきたので、社外の方々も含めてこれだけ多くの人と長い時間をかけてプロジェクトを進行するのは初めてでした。この経験はこれからの仕事、そして人生できっと役立つと感じています。