キダ・タロー
「浪花のモーツァルト」の異名を持つ作曲家。数々のCM曲やテレビ番組主題歌を手がけている。これまでに書いた曲数は把握していないが、3000曲はくだらないという。1日に40曲を書いたことも。
名物看板の前では、世界各国の言葉が飛び交い、看板と同じポーズで写真に収まる人が多数。道頓堀川を巡る遊覧船も一時停止してシャッターチャンス。それぞれのSNSを通じて、OSAKAが世界へと発信されていく。
ふたつの棟を渡すようにかけられている〈空中庭園展望台〉が特徴の〈梅田スカイビル〉。1993年に建設されたが、イギリスの新聞記事をきっかけに、外国人観光客に人気急増中だ。〈HEP FIVE〉の観覧車を見下ろすほどの、40階からの眺望は迫力満点!
総面積約9.7ha、東西約800mに渡る〈靱公園〉。バラ園やケヤキ並木など自然が豊かなので、都心の真ん中における大阪市民のオアシスとなっている。中央には小川が流れ、水辺を愛する大阪人の顔をホッとゆるませる。
大阪府を中心に出店している激安スーパーマーケットとして有名な〈スーパー玉出〉。すさまじくアピールの強い“アートディレクション”。大阪を代表するクリエイティヴかどうかは判断保留だが…。
大阪娯楽代表といえる〈吉本新喜劇〉。劇場公演でお弁当を食べながら、テレビで食卓を囲みながら。長い間、大阪のコミュニケーションの中心にいて、たくさんの笑いを生み出してきた。
最近ではディープスポットとして人気が出ている〈新世界〉では、流行なんてどこ吹く風、将棋がコミュニケーションツールになっていた。カメラを向けても気にしない集中力!
大阪駅や梅田スカイビルの近くにある〈THE PLACE〉。イタリアンの食事やコーヒースタンドのほかに、ギャラリーやコワーキングスペースとしても機能するコミュニティスポット。
外国人観光客にとっても観光のハイライトはやはり難波。梅田とはまた違うエネルギッシュな日本を感じることができる場所だ。アジアからの観光客は馴染みやすいかもしれない。
大川の中洲にある緑に囲まれた中之島公園。川の反対側には〈ブルックリンロースティング〉のテラス席。水辺に向かって仕事したり、友達と会話したりと心地よさそう。
大阪のユースカルチャーを支えてきたアメリカ村にオープンしたばかりの〈PIZZA STAND NY〉は、通りに面したカウンターで購入可能。ストリートでピザをほおばる姿は、“アメ村”によく似合う。
「日本らしい」ではなく、はたして「大阪らしい」クリエイティヴというものがあるのだろうか?まずはコテコテの大阪イメージを感じるキダ・タローさんに尋ねた。テレビ番組〈プロポーズ大作戦〉〈2時のワイドショー〉主題歌などの代表曲以外にも、キダ・タローさんのメロディは知らず知らずのうちに耳にしているはずである。日本人の、特に大阪人の心に溶け込んでいる。「歌詞はすっと耳に入ってこないといけません。もし大阪弁が入っていたら、いつもの話し言葉にする必要があります。だから大阪弁のアクセントを踏襲しないといけません。特に固有名詞は、アクセントが変わると意味が通じなくなるものもありますから」大阪独特の“言葉”を意識して曲を作り続けてきたキダ・タローさん。
同じように、その言葉によって生まれるコミュニティ感に親しみを感じているのは、セレクトショップのディレクターとブランドデザイナーである田中英子さん。「年齢が離れていたり、ちょっと趣味のジャンルが違っても、一緒に遊べるのが大阪です。会社の規模が小さいこともあるけど、他のスタッフは私にフランクに意見を言ってくれます。その間柄は、とてもうれしいことです」人の距離感は近いが同調圧力が強いわけではなく、お互いの個性を尊重する。「大阪弁は言葉が強く感じると思いますが、そのおかげで本当のケンカになりにくい。実はコミュニケーションの取り方としてはやわらかいのだと思います」コミュニケーションで重要な言葉が、大阪では大きな役割を持っていた。
1990年代後半、南船場という地域に新しいお店ができ始めた。その先駆けとも言えるのが、92年に〈浜崎健立現代美術館〉を立ち上げた現代美術家の浜崎健さん。そもそもアーティストがギャラリーを立ち上げることすら珍しい時代だ。「『こんなやつおらんやろう』という人がアーティストだと思っています」という浜崎さんは、まだまだやりたいことのうちの1割くらいしか実現していないという。「学生の頃はスポーツをやっていたんですが、ずっと現役ではいられない。ほとんどのことは歳とともに劣化していくものですが、アートだけはクリエイティヴが研ぎ澄まされていくもの。死ぬ間際に一番いい作品ができるかもしれませんよね」人と土地の蓄積が大阪らしいアートを作るのであるならば、それは浜崎健さんの作品に表れているのかもしれない。
最後に、最も大阪らしいクリエイティヴといえば「笑い」ではないか。大阪人の笑いのDNAには、50年以上続く〈吉本新喜劇〉が少なからず影響しているだろう。伝統的な笑いとはいえ、時代とともに変化していかないと存続は難しい。その意味では、現在でも座長のひとりを務める小藪千豊さんの果たす役割は大きい。「僕の台本は伝統7割、斬新3割のつもりでやっています。ベタな笑いで、今、僕だけがウケてもダメですから。僕の手柄なんてほとんどなくて、ただバトンを受けて新喜劇に乗っかっているだけ。これをいかにいい形で次代につなげていくか」今や大阪の笑いのルールやマナーが、全国を席巻している。その土台には小藪さんのように、土地にあるクリエイティヴを受け継ぎ進化させる意志も必要だ。
キダ・タロー
「浪花のモーツァルト」の異名を持つ作曲家。数々のCM曲やテレビ番組主題歌を手がけている。これまでに書いた曲数は把握していないが、3000曲はくだらないという。1日に40曲を書いたことも。
田中英子
12年前から大阪のセレクトショップ〈クレオパトラ〉でクリエイティヴディレクターとして活動。2015年からは新しいブランド〈ソロヴ〉を立ち上げ、デザイナーを務める。家族やひとりで旅に出るのが好き。
浜崎健
90年代初期からアーティスト活動を始め、1992年には〈浜崎健立現代美術館〉を設立。赤をふんだんに使った作品やパフォーマンスで有名。現在は飛ぶ、寝る、座るという3原則をテーマにした制作活動を行なっている。
小籔千豊
90年代初期に漫才コンビとしてデビュー。2006年には、吉本新喜劇の座長に就任。2017年、開催10周年で8回目となる〈KOYABU SONIC 2017〉が11月3日、4日、5日に大阪インテックスにて開催される。