KAI FACT magazine
クリーンに変革しつつあるインドで、ジャパンクオリティを持った商品を広める。
FACT  No.14

クリーンに変革しつつあるインドで、ジャパンクオリティを持った商品を広める。

今や人口が13億人を超え、数年以内に中国を抜いて人口世界一になるといわれているインド。マーケットとして考えれば非常に魅力的で、貝印は2012年に〈カイ マニュファクチュアリング インディア有限会社〉を設立し、本格的に新規開拓に乗り出した。まずは明確にインドのニーズに合わせたプロダクトを展開。日本の文化と品質を売り出していく。

インドでつくり、
インドや海外へ売る

 貝印は2012年に〈カイ マニュファクチュアリング インディア有限会社〉を設立。オフィスはグルグラム、工場はニムラナと、ともにデリー首都圏に拠点を構えている。インド人のパンディア・ラジェシュがMDに就任し、現在では〈KAI Hocho〉〈KAI Tsumekiri〉〈KAI Kamisori〉と、商品名に日本語をそのまま当て込んだ3種類を展開。「インドでは、日本語で書いてあっても、中国語と区別がつきません。だから英語表記にしました。その代わり日本語名をそのまま使用することで、日本の文化を売っていきたい。そしてこれらの単語を一般名詞として浸透させたい」と語るパンディアMD。特に〈KAI Tsumekiri〉には可能性を感じている。インドは手で食べる文化なので、ツメは清潔にしておかなければならないからだ。
 「歯ブラシやバスタオルのように、〝ひとりひとつ〟というライフスタイルを提唱していきたい。それはヘルス&ビューティーの概念を広めることにもなります」。
 3商品をインドでつくり、インドで売ることから始めて、13億人というマーケットに展開していく。そしてインド国内での雇用創出、女性活躍など、企業としてインドの社会的な向上にも寄与していきたいという。さらにはアジアやアフリカ、中東方面への販路展開など、まだまだ未来の可能性は広がっている。

パンディア・ラジェシュMD/日本で〈カルフール〉〈キッザニア〉〈学研〉など30年以上のマーケティングキャリアを経て、2016年、〈カイ マニュファクチュアリング インディア有限会社〉のMDに就任。現在のモディ首相と同じグジャラート州出身で、公私ともに交流がある。デザインやアート、そしてものづくりが好き。

  • 30人あまりの社員が働いているオフィスは、高層階なので景色がいい。このメインフロア以外に、会議室や食堂も完備している。

  • 河合豊GMを中心に、オフィスの仲間たちと。

日本式企業の伝統を
インドでも守る

(上)毎朝、必ず行っている朝礼の様子。全員揃って日本語で社是を唱える。日本の貝印各社でも行われている光景。(右下)各会議室は「Tawara」や「Oyana」など、日本の工場名がつけられている。社員食堂は「Shokudo」だ。(左中)初代・遠藤斉治朗と二代目・遠藤斉治朗の写真が、パンディアMDのデスクの横に飾られている。(左下)壁には社是、社歌、さらに「守・破・離」という貝印グループのスローガンも掲出。

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インド国内ニーズに合わせた3商品を製造

工場は、デリーから少し離れたラジャスタン州の日本企業専用工業団地内にある。工場内の設計や機械レイアウトなどは日本と変わらないが、気温50度近くまで上がる気候に耐えられるよう断熱性能を高めている。専任工場長として初めて就任したのは沼田明宗GM。自身も工場内を回って、社員の細かい声にも耳を傾けているという。「現場だからこそわかる細かい作業効率や治具の開発などを取り入れて、改善を行っています」。日本や上海の工場で技術研修を行っています。そのノウハウを蓄積。その結果、ベトナムで製造されている日本向け包丁の製造がインドに移ってくることに。貝印グループ全体で製造パターンを増やすことで国際戦略の一助も担っている。

  • 日本の工場となにも変わらない製造風景が広がっている。

  • 上海と小屋名の工場長を経て、〈カイ マニュファクチュアリング インディア有限会社〉の工場長に就任した沼田明宗GM。

    砥石だよ!
  • インド出張、お待ちしています

    日本からの出張者も多く、日々、技術指導が行われている。

  • 休憩所では、軽食とチャイをいただける15分のブレイクタイム。これが次への活力になる。
    総勢60人以上の社員。メリハリをつけて働いている様子が感じられた。

     

日本語のままで商品化し、
“品質の高さ”により差別化する

〈カイ マニュファクチュアリング インディア有限会社〉の主力商品は以下の3種類。インドではまな板ではなく手に食材を持ったまま切るので小さなサイズにした〈KAI Hocho〉、手で食べる文化が残っているためツメの間の掃除ができるピック付きの〈KAI Tsumekiri〉、現地のヒゲが濃い人でも整えやすい〈KAI Kamisori〉。いずれもインド国内の文化に合わせた開発を行った。また、さまざまな層に届きやすいように、カラーリングも豊富に仕上げた。

日本製からインド製まで。
インド唯一の〈kai shop〉

2017年、デリー最大級のショッピングモール内に、インド初、世界で5店舗目としてオープンした。インド国内製造商品である〈KAI Hocho〉〈KAI Tsumekiri〉〈KAI Kamisori〉を中心に、400点ほどの商品が揃う。

食材の知識を蓄え、技術を研鑽すれば
レシピはおのずと生まれてくる

「口に入れたときにおいしいのは当たり前。体に採り入れると、その食材がどのような効果をもたらすのかを知ることが大切で、シェフはそれに責任を持たなくてはなりません」というマンジットさん。その知識を深めていくと、地域の気候に合わせた食材が育つ「ローカリティ」、そして季節ごとの食材が人の体と心の調子を整えてくれるという「シーズナル」に辿り着く。このふたつを大切にして料理し、食していくべきだという。

普段から貝印の包丁を使っているというマンジットさん。「包丁が一番大切。替えが利かないので人から借りることもできません。切れ味は言うまでもなく、重さのバランスがいいので使いやすいです」

マンジット・ギル/インドの高級ホテルチェーン〈ITCホテル〉グループの総料理長であり、Indian Federation of Culinary Associationsの会長。トラディショナルなインド料理を推進している。近年は次世代の育成にも力を入れ、インド料理界の底上げを図っている。赤いターバンがトレードマーク。


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