名古屋駅に直結した〈JRセントラルタワーズ〉。隣にある〈JRゲートタワー〉も含めて、高層階には数多くのオフィスが集まり、ビジネスの中心地となっている。“名駅”周辺は、さらなる大きな開発も控えていて、目が離せない。
ファッション、音楽、飲食店など、小規模ながら個性的な店舗が多く、それを求める若者が集まってくる大須エリア。最近ブームが再燃しているレコードやカセットテープも、欠かせないカルチャーのひとつだ。
百貨店や大型ショッピング施設が軒を連ねる栄エリアは、いつも買い物客で賑わっている。〈名古屋テレビ塔〉や〈オアシス21〉などの観光スポットも点在しており、名古屋の文化の中心地となっている。
街の中心地に突如として現れる巨大な球体。〈名古屋市科学館〉のプラネタリウムだ。市民の憩いの場である〈白川公園〉に併設しているので、休日には子どもたちが元気に遊ぶ姿を見ることができる。
一説には、“経済的に安定していて食うに困らず、食に遊びが入り、独特の進化を遂げた”という名古屋の食文化。イチゴを練り込んだパスタに生クリームをトッピングする“突き抜けた”料理も登場。
名古屋を始め、中部エリアには昔ながらの喫茶店が多くあり、ディープな喫茶店文化を形成している。特にモーニングの豪華さは有名だ。コーヒー1杯とほとんど変わらない値段で立派な食事が付いてくるので、休日などは朝食昼食兼用のブランチとしている人も多い。
喫茶店は街角にたくさんあるので、パッと入るのにも困らないし、市民にはそれぞれの行きつけも存在する。年配から若者まで、一番のコミュニケーションの場は、昔から喫茶店なのだ。
10枚綴りなどのコーヒーチケットをあらかじめ購入して支払うのが常連の証。それぞれに名前が記してあり、ボトルキープのよう。お金を一切持ってこなくてもコーヒーが飲めるという、ある種の信用商売の伝統が残っている。
昭和的なレトロ喫茶に残るテーブルゲーム。その代表格ともいえる〈スペースインベーダー〉の最も有名なテクニックが“名古屋撃ち”であるのは、偶然の産物か!? もちろん今でも現役として楽しまれている。
名古屋には東京でも少なくなってしまった、いわゆる大箱クラブがあり、まだまだ元気だ。また、中心地にはアーケード商店街がいくつもあるので、ちょっとの雨でも大丈夫。若者は全天候型で楽しめるのだ。
味噌カツ、あんかけスパ、小倉トースト、台湾らーめん、ひつまぶし…。“名古屋めし”と呼ばれるものの多くは、全国的に定番化しているわけでもなく、名古屋に来ないと食べられないので、より特殊性が強くなるのだろう。外に出ない名古屋人の保守性を、食からも感じる。
東京と大阪という異なる文化圏に挟まれて影響を受ける名古屋には、どんなカルチャーが根づいているのか。4人のクリエイターに、名古屋での活動における自身のクラフトマンシップとクリエイティビティについて聞いた。
インテリアデザイナー 日比野義之さん
「名古屋という土地の特性や流行にとらわれすぎず、長く残るものをつくっていきたいです。そう意識すると、時間や流行り廃りにも影響を受けない漆喰や無垢の木材などの素材を使うことが多くなります。自然と丁寧な仕事につながっていきますね。私が一番気を使っているのが〝ディテールの無意識さ〟。水平さや照明の高さなど、利用者は気が付かなくてもいいけど、なんとなく落ち着く。そんな空間づくりを追求しています」
〈LIVERARY〉編集者 武部敬俊さん
「名古屋には職人的な人が多く、カルチャーの世界でもそれは同様です。彼らはおもしろいことをしているのに、自ら発信することが得意とは言えません。それらを包括的に可視化することで、知ってもらうきっかけが増えればと思い、ウェブメディア〈LIVERARY〉を立ち上げました。ローカルならではの性質も意識しつつ、クリエイティヴなヒト・モノ・コトを名古屋の人はもちろん、外の人に向けて発信していけたらと考えています」
〈Circles〉オーナー 田中慎也さん
「名古屋はものづくりの地域ですが、すでに、ただ〝もの〟をつくっていればいいという時代ではありません。自転車メーカー/ショップでありながら、朝食カフェ〈アーリーバーズブレックファスト〉の経営や定期的に〈バイク・トゥ・ワーク〉というイベントを開催しているのは、おもしろい人を集めるための仕掛けです。その発展系としてウェブマガジンも始めました。自転車業界の視点で名古屋情報を紹介していけば、街で自転車がどのように活用されていけばいいのかを伝えやすくなります」
DJ MURAKAMIGO
「20年以上DJをやっているので、ある程度、人の心をつかむDJはできるようになってきました。しかしお客さんの感動に、自分の感動が乗って初めて、質の高い感動が味わえると思っています。だから大切なことは、自分のテンションを上げること。最近は、コツコツとしたヒットは狙っていません。それよりホームランか豪快な三振がいい。僕もそうですし、名古屋人はあまり外に出ないかわりに、独自の感性を持った、すごく濃いDJやアーティストが生まれてきますよ」
住宅や店舗、展示会などの内装設計を行うインテリアデザイナー。独立して約20年。年間10〜20の案件を手がけている。クリーンなデザインが信条。
愛知県名古屋市東区代官町18-13
松浦ビル1F
http://beets.jp/
東京で編集アシスタントを経験後、名古屋に戻り、編集業に就く。2013年、ウェブメディア〈LIVERARY〉を〈ON READING〉という書店の黒田義隆さんらと立ち上げる。
http://liverary-mag.com/
〈Circles〉オーナー。自転車周りのパーツやアパレルを販売。オリジナル商品も展開している。〈アーリーバーズブレックファスト〉というカフェを併設。
愛知県名古屋市中区千代田
4-14-20
http://circles-jp.com/
アパレルやクラブマネージャー、中古レコード店バイヤーなどと兼務しながら、DJを始めて約30年。最も多い時で年間300本ものDJをこなしていた。
http://murakamigo.com/
名古屋経済を支えてきた製造業は、つまり高度成長期の日本経済も支えてきた。
時代が変わりつつある現在も、日本のものづくりを牽引する中部エリアの工場は、絶え間なく、着実に、その煙を吐き続けている。