企画・販売促進部部長など3つの役職を兼務し、また〝創業家の長女〟としての顔も持つ遠藤部長。学生時代は他の仕事に就くことも考えたという彼女が、最終的には家業である貝印を選んだ、その決め手とは何だったのか。「仕事って1日の大半を費やすものじゃないですか。なのでせっかくなら、やってよかったと誇りに思えるもの、自分の力を活かせたと、いつか胸を張って話せるものがいいと思っていました。その点、貝印なら働くことがそのまま家族のためになる。私がこれまで学んできたもの、いま持てる力を家族に返せるというのは大きかったですね。またそれができるのも、たまたまこうした境遇にいるおかげ。本当に幸せなことだと思っています」。
創業家の一員であると同時に、女性であることも強く意識している。入社当時から感じているのは、貝印がまだまだ男性中心の会社だということ。ある会議では、集まったメンバーの中で女性は自分だけということもあったそうだ。「貝印の製品ラインナップを見渡してみると、メイクツールのような女性向けアイテムはもちろん、包丁やキッチンツールといった、女性により身近なものも多いんですよね。それらを扱う中で例えばパッケージの説明ひとつとっても、〝これにはこういう意味があるんです〟と男性が言うのと女性が言うのとでは、説得力も違ってくるはず。より良いものを作りさらに世に広めるために、もっと女性の存在が必要だと感じています」。
遠藤部長が現在統括している3つのチームはどれも女性の比率が高く、中でもKOBAKO推進室は所属する全員が女性だ。このような編成は貝印全体で見ればまだまだ珍しいが、社内に新しい風を送り込んでいることは確かだろう。自身の立場を常に意識せざるを得ない存在であることが、冷静な思考と俯瞰の視点をもたらしている。「常に願っているのは貝印が〝長く愛される会社〟になることですが、そのためにもまずは自分の手の届く範囲から〝女性がきちんと輝いて働ける会社〟を目指したい。私のような存在がいることでその道が開けるなら、こうして働いていることにも意義があると思うんですよね」。