KAI FACT magazine
変化への許容とゆずらない信念。その中間が“ちょうどいい”。
FACT  No.12

変化への許容とゆずらない信念。その中間が“ちょうどいい”。

福岡は日本列島の西部に位置することで、特にアジアからの玄関口になっている。最近では福岡市がクリエイティヴ産業の活性化へもいち早く動き出すなど、“現在進行形”の事例を受け入れる懐の深さがある。そうした外からの流入に寛容である一方、自分たちの内側では強い信念を持ち、周囲を否定することなく自らの活動に没頭する。福岡にはその両面を持ち、うまく使い分けていける人が多いようだ。

1964年に開設した高さ約100mの〈博多ポートタワー〉は、東京タワーも手がけた内藤多仲による設計。博多港のシンボルとして、おもにアジアから到着するたくさんの観光客を出迎えてくれる。

  • 都市機能がコンパクトにまとまっている福岡。特に薬院のような商業地と住宅地が混在しているエリアでは、自転車で街をさっそうと駆け抜ける姿がよく見られる。

  • 福岡の街中では、アジア人観光客の多くがショッピングなどの街歩きを楽しんでいる。日本人同様にカフェでくつろいでいる姿は、もはや福岡では日常風景。

  • 大きな池を囲うようにできている国内屈指の水景公園〈大濠公園〉。池の周遊道は約2kmで、ランニングやサイクリングに最適。多くの市民が公園を楽しんでいる。

清永浩文/1967年生まれ、大分県出身。〈SOPHNET.〉〈F.C.Real Bristol〉〈uniform experiment〉を擁する〈SOPH.CO.,LTD.〉の代表。東京のファッションシーンを牽引する一人。2017年4月、福岡で〈KIYONAGA&CO.〉を開始。

「2年前から東京と福岡の2拠点生活を始めました。そして始めたのが〈KIYONAGA&CO.〉。自分でもどうなるのか分からない実験的かつパーソナルなショップで、〈SOPH.〉とはまた違うアプローチです。商品はネット販売せず、ここに来ないと買えません。すべて自分でやっているのが新鮮です。新しい人たちと友だちになって、楽しみながらコミュニティに参加しています。新しい町内会に来た感じですね」

KIYONAGA&CO.
1-12-6, Akasaka, Chuo-ku, Fukuoka City
092-791-5100
http://www.kiyonagaandco.com

  • 〈Fukuoka Growth Next〉は旧大名小学校の跡地にできた官民協働型スタートアップ支援施設。1階には〈福岡市スタートアップカフェ〉が入り、気軽に起業の相談を受けてくれる。

  • 若者でごった返す大名から、薬院方面へ抜けて行く通りには、少し落ち着いた雰囲気の飲食店や雑貨店などが軒を連ねている。子ども連れの若いお母さんなどもチラホラ。

福岡名物の屋台。全体的な屋台数は減少傾向にあるが、中洲の那珂川沿いにある屋台街は昔と変わらぬ姿で今も賑わっている。最近では外国人観光客の姿も多く見られる。やはり屋台は、はしごするのが楽しい。

長浦ちえ/福岡県生まれ。水引デザイナーとして活動し、2013年に自身のブランド〈TIER(タイヤー)〉を立ち上げる。主な著書に『手軽につくれる水引アレンジBOOK』シリーズ、『はじめての水引アレンジ』など。

「“水引”をテーマに古典からロックまでを表現しています。その中でオリジナルのご祝儀袋もつくっています。大人が使えるように、こだわりの素材を使いました。水引は宮内庁ご用達の職人さんに特注、包み紙もすべてこうぞ繊維のみを使用した手漉き和紙です。クリエイティヴな作業には自分の内面が表れます。福岡にいると自分が健やかな状態でいられて、創造する土台をつくれます」

TIER
https://tiers.jp

二俣公一/鹿児島県生まれ。1998年からデザイナーとして活動開始。空間設計の〈CASE-REAL〉とプロダクトデザインの〈KOICHI FUTATSUMATA STUDIO〉の両事務所を主宰。

「空間やプロダクトなど幅広くデザインをしていますが、最近はテナントビルや住宅などの建築も増えています。プロダクトは比較的、個性的な国内外のブランドから発売される作品も多く、より個人的なプロジェクトとしてもやりがいを感じます。30歳のころには東京事務所も設けましたが、デザインを練るのは、この福岡事務所にある自分の小部屋。あちこちを行き来することで、どの場所も客観的に見ることができるメリットも感じています」

CASE-REAL/KOICHI FUTATSUMATA STUDIO
1-9-8, Imagawa, Chuo-ku, Fukuoka City
092-718-0770
http://www.casereal.com
http://www.futatsumata.com

  • 福岡のコーヒーショップは、カルチャー発信基地となっている。中心地の天神にある〈manu coffee〉にも、ファッショントレンドに敏感な若者が集まり、次代のコミュニティを形成している。

  • 流行を生みだすのは、いつも大名のストリートから。車が入ってこない通りなので、そぞろ歩きが楽しいエリアだ。“並ぶのが好きではない”らしい福岡人でも、最近ではおいしいものなら、行列してでも食べたいようだ。

  • 警固には人気ショップが裏通りに点在している。わざわざそこを訪れたくなるほど、目的地となるショップが多い。〈COFFEE COUNTY〉もそのひとつ。

  • 2013年に〈福岡市屋台基本条例〉が施行され、それまでの屋台の常識を覆す〈Telas & mico〉のようにポップなデザインの屋台が数軒、誕生している。屋台界のニューウェーブ!

  • 左ページでも紹介しているノンチェリーさんのイラストが存在感を示している〈manu coffee〉。ほかにも内田洋一朗さんのタイポグラフィアートも展示されている。

ノンチェリー/鹿児島県生まれ。音楽活動と並行して、2014年からイラストレーターとして活動を始める。多くのレコードジャケットや福岡県内外の飲食店に作品を提供している。

「自分の作品は“みんなのイラスト”でありたいと思っています。街におもしろい成分をばらまいて、ちょっと楽しい気分になってもらいたい。福岡のクリエイターは、みんな肩の力が抜けていてマイルド。東京より好きなことをやっても生きていける生活環境なので、その分、自分の創作に労力をかけられるのだと思います。だから外からの人たちに対してもサービス精神がありますね」

ON AIR
3-12-31 2F, Yakuin, Chuo-ku, Fukuoka City

副島邦彦/福岡県生まれ。家具インテリアのバイヤーとして活動後、2002年に〈NEST design inc.〉を立ち上げる。小売り業務以外にも、デザインやコーディネート業のほか、〈BAR ugle〉も運営。

「北欧のヴィンテージ家具とインテリアなどのセレクトショップを経営しています。特にデンマーク家具は職人のこだわりが強く、使っていて心地よい。一生付き合えるものです。昔から、福岡の人は審美眼があり、良いものにはきちんとした対価を払う文化があります。そうした価値観は、自分の考え方とも近い。目利きの人たちに、福岡まで足を運んでもらえるようにしていきたいですね」

NEST/BAR ugle
2-13-27, NEST Bldg-1, Yakuin, Chuo-ku, Fukuoka City
092-725-5550/092-725-5959(BAR ugle)
http://nestdesign.jp

海沿いに建っている〈福岡タワー〉の展望台からのオーシャンビューは格別。
眼下には南仏にありそうな素敵な結婚式場が見える。実は福岡市の海岸線は約134kmととても長く、 きれいに整備されている。


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