ヨーロッパではもちろん、世界的にも有名な刃物の産地であるゾーリンゲン。貝印もまた、その地にヨーロッパ拠点を構えている。現在の小川良一MDは、1980年にドイツに赴任。当時はデュッセルドルフに駐在事務所を構えていたが、現在のゾーリンゲンに移転するとともに現地法人〈Kai Cutlery (EUROPE) GmbH〉(現カイ ヨーロッパ有限会社)が設立された。日本の刃物メーカーが参入するにはハードルが高い、刃物の伝統ある土地だが、現在では〈ドイツ刃物工業組合〉のメンバーに加わり、信用を得ている。当時、日本の包丁は売れなかったが、プロの料理人の間では日本の包丁はよく切れると評判だった。和食の世界的な浸透とともに、プロ仕様の道具として一般にも認知されていった。
ヨーロッパ全体を見れば、たくさんの国、そしてたくさんの言語が使われている。KAI Europeで制作するカタログは最低でも6カ国語を作成。さらには東ヨーロッパ方面など、新しい地域への進出も必要になってきた。
「なるべく現地の言葉で深く入っていくことが必要です。そのために、主な地域の母国語を話せるスタッフは揃っています。これからはこの多国籍軍で、今まで以上に現地のニーズを深堀りしていきたいです」と言う小川MD。時代とともに留まることのない新規開拓と、それに対応していく柔軟性や多様性を必要としている。
小川良一MD(右)/1980年からドイツでKAI Europeを支え、現地法人設立にも尽力してきた功労者。
「倉庫作業から税関申告、営業までありとあらゆることを経験してきました」。これから社屋を拡大予定だとか。
工樂猛志DMD(左)/ドイツ生まれ、高校卒業までドイツ育ち。
2019年1月にKAI Europeに赴任したばかり。「さらにKAIのファンを作って、よりヨーロッパ向けの商品を提案していきたい」
ティム・ヒルガーさん/シェフや美容師など、専門分野のマーケティング担当。「仲良くなればいいパートナーになれるのがドイツ人」
ローズマリー・デルツァーノさん/語学が堪能で、ドイツ語圏以外の家庭用品の営業担当。「ドイツ人は真剣でプロ意識が高い」
ヨルク・ヤンゼンさん/ドイツ国内の営業担当。「日本製品は完成度が高く、ヨーロッパ全体で好意的に受け入れられています」
1980年代後半からモデルやスタイリストとして活動し、さらにはミュージシャンや俳優としても活動しているホルヘ・ゴンザレス。
2016年からKAI Europeと協業し、貝印のビューティーケアブランド〈MIMUNO〉のアンバサダーを務めている。また、ヘアドライヤー、アイロンなどのブランド〈KASHO STYLING by JORGE GONZÁLEZ〉を企画した。貝印の技術力に加えて、美に対するホルヘさんの知見が融合した商品をヨーロッパにおいて展開している。
2019年2月8〜12日、フランクフルトにて毎年行われている世界最大級の家庭用品展示会〈Ambiente〉に出展した貝印。111周年を機に〈Edges Ahead〉をテーマとして、シャープなブースデザインに生まれ変わった。ブースはもちろん、プロダクトの評判も良く、遠藤宏治社長、遠藤浩彰副社長も現地を訪れて商談相手を迎えるなど、常に人が賑わう場となっていた。貝印グループとして大切なマーケットであるヨーロッパにおいて、着実な成果をあげられた。
(右上)〈関孫六〉の新商品もお目見え。他にも〈旬Classic White〉や〈Kamagata〉など、新商品の評判も上々だった。(右下)ドイツの中心都市、フランクフルトで開催されている〈Ambiente〉。今年度は92カ国が参加し、参加来場者数13万6千人を迎えた。
〈Ambiente〉で共同プレスイベントを開催し、コラボ包丁を発売しているドイツの有名シェフTim Malzerさんにインタビューした。
「2011年に初めて日本で貝印のものづくりに触れて、想像以上に手作業が多く、クラフトマンシップに感動しました。〈旬Shun Tim Malzer〉の新シリーズは、14世紀に日本の漁師が使っていたという伝統的なフォルムを再現しました。時代性にこだわらず、シンプルで長く使える包丁ができたと思います」。
新発表された〈旬Shun Tim Malzer〉シリーズ。
〈Ambiente〉にて遠藤宏治社長、KAI Europeの小川MD、ヨルクさんとともに。