貝印の田原工場でハサミの生産に携わる3人。職歴や持ち場は違えど、スパッと切れ味のいいハサミにかける情熱は同じ。3人が製作するのは、国内外の有名メーカーで車のシートや衣類の裁断にも使われる、貝印でも最上位クラスのハサミ「7000シリーズ」。毎日500~600本が作られる。その過程を見学させてもらった。
この7000シリーズのハサミは、一般的なハサミと違い、独自の生産ラインで生産している。素材からして違う。通常は筒状に巻かれたステンレス・スチールを金型で抜くのだが、巻けないほど厚い3ミリの平たい板状の素材を使用。それをレーザーで切断するところから製作が始まる。ハサミの形に切り抜いたステンレスは、1050度の炉で20分ほど加熱した後、冷却し、再度180度で焼き戻しをして、欠けにくく強い素材に。そこから3人が働くラインへと運ばれる。ここでは表面と背をきれいに磨き、裏側を削る「裏スキ」、砥石で刃を付ける「刃付け」の後、「ショットブラスト」で表面の質感を整え、「レーザーマーキング」でロゴを入れる。黒い樹脂のハンドルが付くと、ようやくハサミらしくなるが、まだもう少し。水をかけながら刃を研いだら、両刃をビスで止めて、さらに刃先を細かく研磨。そして最後に、最も重要となるのが切れ味を出す、最終調整の工程だ。ここでは1本1本、手作業で布を切りながら、根本から先端まで均一に切れるかをチェック。両刃の反りを調整して切れ味を出す作業は、長年の経験がものを言う職人技。ハサミ作りに機械は欠かせないが、それ以上に人の手による部分も大きいのだ。
「どこの作業が特に重要というのはなくて、全てが大切。誰が担当するどの工程でも精度が出ていないと、最終的な調整に手間取ってしまう。全員の気持ちがひとつでなければ、この仕事はできないんです!」
とは、このラインの最終調整を担当するリーダーの田口早奈江さん。ハサミが切れて喜んでもらえるのがやりがいという。
「切れるか切れないかが、私たちにとって最も大切。見た目も切れ味もいい、本当にキレイなハサミを作れたら嬉しいですね」
とは、このラインの最終調整を担当するリーダーの田口早奈江さん。ハサミが切れて喜んでもらえるのがやりがいという。
「切れるか切れないかが、私たちにとって最も大切。見た目も切れ味もいい、本当にキレイなハサミを作れたら嬉しいですね」