ART

ペインター・UC EASTが自分と向き合うことで描いたAUGER®︎コラボ作品

ゼロからイチへ、オリジナルなものを作り出していく、その前段階。クリエイターたちはどういった過ごし方をしているのだろうか。自分と向き合うこと、そこから生まれる歓び。その向き合う直前にある時間/行為こそ、知りたくなる。

「自分にとって『向き合う』とは絵を描くこと。絵を描くことは鏡より鏡」と語るのは、大阪を拠点にアート〜音楽〜ファッションとさまざまなシーンを横断して活躍するペインターのUC EASTだ。AUGER®︎の世界観をモチーフとして制作されたコラボレート作品は、「前か後ろかわからない絵にした。すべてのことにおいて二面性があることが常だと思っているから」という思いが込められたアートとなっている。「整える行為自体、整えている時間そのものが好き」とも話す彼女に迫った。

—今回のAUGER®×UC EASTのコラボレート作品について、そこに込めた思いから聞ければと思います。

AUGER®のコンセプトである、「整える」「自分と向き合う」とはなんだろう、ということをすごく考えたときに、自分にとって「向き合う」とは絵を描くことが一番そうだなと。絵を描くって、鏡より鏡なので。鏡は表面的にしか映らないけど、絵を描くことのほうがもっと深く、内面的な自分と向き合うことになる。

今回の作品は、前か後ろかわからない絵になっていて。それは描いている途中から意識して描きましたね。絵の下のあたりを見れば背中に見えるけど、上のほうを見ると胸にも見える。あとはお腹を膨らませてみたりと、自分の実体験が反映されている気はしますね。

—たしかに、出産を経て、絵のタッチが変わった印象を受けました。

そうですね。産後すごく変わったことと言えば、直接、手で描く手法を止めたこと。呪いのように手で描くことにこだわっていたんですけど、それだとやりたい表現の幅が限られてきたので、今やりたい絵を考えると、筆を使おうと思ったんですよね。

—出産が契機になったと。

変えたかったというのもあるかも。だから出産というタイミングに乗っかった部分はありますね。妊娠する前くらいは、自分に飽きていた部分もあったから。でも今までやってきたことの自信もあるし、変えることって不安でもある。だから、出産をきっかけにポジティブに変わることができたのはよかったですね。

—直接、手で描くことのほうがより直感的、即興的に描けていたかと思いますが、それを筆に変えてどうでしたか?

手で描くときって、どちらかというと削ぎ落としていく感覚だったんですね。筆を使うとなると、それが逆になって足していく。手のときは大胆に進めていたのが、筆だと少しずつ足していくことになるから、そうすることでもっと向き合えるようになった。今また絵が楽しいなという思いはありますね。

—今回の作品は人体がモチーフとなっていましたが、普段から絵のモチーフにする対象はどういったものが多いですか?

有機物というか、時間の経過を感じるもの、生きていたであろうものに昔から惹かれる。だからといって生き生きしたものを描きたい、とかでもないんですけど。静かで生きている。そういうのに惹かれます。今見えているものって時間の経過の結果だと思っていて、その時間の経過を想像して描くことで、深みを描きたいというのはありますね。

今回のコラボート作品は、AUGER®の協賛のもと、香川県高松市のアートスペースCENTER/SANUKIで去る10月に開催された展示イベント『SELLIT 4』において初披露された。同展がテーマに掲げる「アートと向き合い、自分にとっての価値を考えて入札する」という行為が、AUGER®の「自分と向き合う」というコンセプトに通じることから協賛に至った。写真はそのときの様子から。

—では、AUGER®についても聞かせてください。実際にAUGER®のアイテムの使い心地はどうでしたか?

毛抜きがめっちゃ気に入っています。私、毛を抜く行為がすごく好きなんですよね。無心になれるから。だから脱毛には全然興味がない(笑)。毛抜きはいろんな種類をめっちゃ持っているんですけど、AUGER®の毛抜きは力を入れなくてもすごく掴みやすい。

あと、ツメキリも使いやすい。ツメキリってなかなか買い換えることないじゃないですか。それこそ実家から持ってきたようなものをずっと使っていたから、切れ味もよくなくて、そうなると圧で切るんですよね。だからツメも飛ぶし、切ったあともギザギザになるから研がないといけない。だけど、AUGER®のツメキリはちゃんと刃で切っているから、ツメが飛ぶこともないし、断面もきれいだから研ぐ必要もない。絵を描く前にツメを切るのはルーティーンですね。少しでもツメが伸びていると描くときに感覚がすごく鈍るのもあるし、絵の具がツメのあいだに入っちゃったりもするのもノイズになってすごく嫌なので。

—自分の身体を整えた状態で作品制作に向かいたいと。

整えたいというよりは、整える行為自体、整えている時間そのものが好き、というのもありますね。

—先ほどのツメを切ることもそうですが、制作に取り掛かるためにルーティーンにしていることはほかにありますか?

ツメを切って、制作用の作業着に着替えて、作業スペースを整える。で、エナジードリンクを飲んで、煙草を吸う。この一連の流れは制作前に必ずしますね。そういった意味では準備にけっこう時間をかけている気がします。あと、音楽も絶対にかけます。

—音楽はどういったものを?

SoundCloudで自分の身近なDJのミックスを流すことが多いかな。

—今回のコラボレート作品の制作時は誰のDJミックスだったか覚えていますか?

誰やったかなー。Torei氏かな。Torei氏を聴いて、nutsman氏を聴いたかな。

—音楽をかけるときはイヤフォンやヘッドフォンで? スピーカーから?

スピーカーからですね。イヤフォンで遮断されると、音楽すぎてそっちに集中が持っていかれるというか。もっと環境音と混じった状態の音楽のほうが私的にはやりやすい。今は子どももいるので、絵を描くときくらいしか音楽を聴かないかも。子どもができてからクラブにも全然行かなくなったので。だから私にとって絵を描くときは音楽を聴ける時間でもあって、スペシャルな時間ですね。「今日は誰のミックス聴こう?」みたいな。

—「絵を描くこと自体がもっとも自分と向き合うこと」と話していましたが、そのあたりをもう少し聞かせてください。

描いているときよりも、描き切ってから気づくことが多くて。出来上がった作品を見て、「今の私ってこんな感じなんやな」って。絵で自分の機嫌を知ることがよくありますね。だから鏡より鏡だなと。描いているときは苦しい時間のほうが多い。でも苦しんだ分、いい作品ができる。どうすればいい絵になるかはすごく悩むんですけど、かと言って絶対的な正解ってないじゃないですか。すべてのことにおいて二面性があるのが常だと思っているので。そういった意味で、あやふやな感情をテーマにすることは多いですね。

—「自分と向き合う」ことって、自分の二面性を知っていくことにもなりますもんね。

めっちゃあると思います。向き合うってすごくしんどい行為なので。そこまで知りたくないというか。自分の弱い部分も知ることになるから。でもやっぱり、絵を描き終わったときには向き合ってよかったなと思いますね。絵以外はちゃらんぽらんなんですけど、絵を描くときだけは向き合っているので。絵を描くことで、向き合うことで、自分を律することができる。

—自分に社会性を帯びさせることができる?

なりたい自分でいられるというか。普段は欲まみれで、わがままに生きてきたので(笑)。絵はライフワークでありつつ、人とつなげてくれるのも絵なので。絵にはすごく感謝しています。

UC EAST
徳島県出身、大阪府在住。クラブカルチャーに触発されライブペイントから活動を開始。ライブであることに重点を置いたパフォーマンスをさまざまな音楽家とともに作り出している。他にも、個展やグループ展、音楽のカバーアートやフライヤーなどのデザイン、アパレルコラボなどさまざまな制作活動をしている。 Instagram:@uceast193

Photography_Masahiro Yoshimoto, Edit&Text_Takuya Nakatani(DEGICO)

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