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妄想して、ディグる。映像作家・マザーファッ子の整え方は「断捨離や掃除がオンオフのスイッチ」

ゼロからイチへ、オリジナルなものを作り出していく、その前段階。クリエイターたちはどういった過ごし方をしているのだろうか。自分と向き合うこと、そこから生まれる歓び。その向き合う直前にある時間/行為こそ、知りたくなる。

今回は、新世代アーティストimaseがAUGERをイメージして書き下ろした楽曲「ピリオド」のMVを手がけた映像作家、マザーファッ子にインタビュー。同MVのプロップにもいくつか使用したという私物が溢れる自宅兼スタジオにて取材した。

マザーファッ子/motherfucko
映像ディレクター/VJ/DJ。ミュージックビデオ、広告などの映像ディレクターをメインに活動。クラブイベントにてVJやDJを行うこともある新進気鋭の自宅警備員。
Instagram:https://www.instagram.com/motherfucko/
Twitter:https://twitter.com/na_teuki

─imase「ピリオド」のMVはAUGERの製品を使って身支度をするGRWM的な映像に仕上がっています。本作はどのようなところから着想したのでしょうか?

貝印さんからいただいたAUGERの資料に「洗面台」というキーワードとともに、実際の洗面台の参考写真がいろいろ載っていて。それを見て「洗面台が向かい合っていたら面白いな」と思って作り始めました。洗面台の鏡をくり抜いて向かい合っているセットを使っているのですが、そのビジョンがパッと浮かんだんです。それをそのまま撮るのではなく回転させていったら面白そうだな、imaseさんの部屋っぽい空間も作ろうかなと、ビジュアルのアイデアをもとに膨らませていきました。

─身支度をするというストーリーについては?

洗面台を使うということで、寝ているところから始まって、起きて、準備して出かけていくという大枠のストーリーはすぐに思い浮かびました。ただ、それをそのまま撮ると日常的すぎる。AUGERの製品は、爪切りやカミソリといった生活の中で使うものですが、見た目はモードでおしゃれ。だったら普通に洗面台に置くよりも、作られた空間に置いたほうが製品の印象も伝えられるのかなと思い、少し非日常的な世界観にしました。

─MVの中で特に大切にした部分、こだわった部分を教えてください。

身支度をして家を出るまでを描いていますが、「ちょっとコンビニまで」とかではなくて、ワクワクして外に出るみたいな感じにしたいなと思いました。そのために、扉のシーンは壮大にしています。理由としては、リリース時期が3月だったので新生活を意識したというのが1つ。あとは、身支度を整えるというのはすごく日常的なことですが、せっかく映像化してMVにするなら、何かいいストーリーを付けたくて。

─ただ家から出るのではなく、何かに向かっていくような。

そうです。その“何か”は、見ていただいている皆さんそれぞれの経験や状況に当てはめてほしいのですが、“幕開け感”みたいなものを感じとってもらえるような映像にしたいなと思いました。

─撮影時のエピソードで印象的なものがあれば教えてください。

実は自分の私物を結構使っているんですよ。きのこ型のライトや椅子、カメラ……あとは、imaseさんが手に持っている鏡も私物です。雰囲気に合うかなと思って持っていきました。

─それを知るともう一度MVを見たくなりますね。MVは身だしなみを整えて家を出るまでのGRWM的な映像ですが、実際、マザーファッ子さんの家を出るまでのルーティーンはありますか?

私は仕事の内容的に、月の半分くらい家で作業しているので、普段はずっと部屋着で。本当に必要最低限のことしかしていないです。だから撮影などで人に会う前に身だしなみを整えることが1つのスイッチみたいにはなっていると思います。といっても特別なことはしないのですが。

─家の中での作業が多いとのことですが、家で作業するにあたって心身を整えるためにやっていることがあれば教えてください。

整えるとはちょっと違うかもしれませんが、アイデアを練るときにやることは、コンテンツをめちゃめちゃ消化すること。Netflixでドラマや映画を観るとか、いろいろなMVを観るとか、ゲームをするとか。趣味が仕事になっているので、オンオフの切り替えはあまり必要ないですが、断捨離や掃除は意外とオンオフのスイッチにしているかもしれません。

──朝起きたときのルーティーンや寝る前に必ずやることはありますか?

おしゃれなことはやっていなくて……寝る前にゲームを(笑)。MVを作るときは、曲を聴いて世界観を想像していくのですが、そもそも私は想像することが好きで。ゲームも想像世界ですよね。その空想の世界の中にいるのが楽しいんです。

─AUGERでは「自分と向き合う」という行為や時間を大切にしています。マザーファッ子さんは、MVや広告映像の制作をされていて、オーダーを受けてつくることが多いと思うのですが、そのなかで大切にしている自分自身や、自分らしさはどのようなものですか?

個人的にはレトロフューチャーが得意で、ブラウン管のテレビやカラーライトはよく使っていますね。最近は、TikTokの影響もあると思うのですが飽きない構成が世界的に流行っているような気がしています。常にトランジションしていたり、“変わり続けて最後まで行く”みたいなことは時代にあわせて意識しています。ただ、自分では全然やったことのないものを作るのも面白いと感じているので、クライアントさんが望んでいるものになるべく近づけたいとは思っています。音楽でいうところのディグる感覚というか。自分の中になかったり、自分が知らなかったりするような新たなリファレンスをディグって探していくのが楽しいんです。

─制作に取り掛かる前段階における、整える行為の大切さについて、マザーファッ子さんの思うところを聞かせてください。

MVや映像制作の工程は大きくわけると、企画書制作、絵コンテ制作、撮影、編集、納品からなります。この中でいうと、オーダーをもらって企画書を作るところが準備段階。企画書はクライアントさんに「こういうイメージで撮ろうと思います」とお伝えするもので、参考になる画像や動画を集めてまとめていく作業です。この企画書をもとに、各セクションの方が準備にとりかかるので、すごく重要な工程です。同時に、「こういうのを作ろう」と妄想する段階でもあるので、私が特に好きな工程でもあります。

─制作していくなかで、モチベーションが保てなくなったりすることはありませんか?

落ち込んだりすることはないですが、モチベーションの上下はもちろんあります。ゾーンに入っているときは全然寝てなくても作業できますし(笑)。

─モチベーションが下がっているときはどうされますか?

追い込まれるとやる気が出てきます。そういう意味で私はMV制作が性に合っていると感じます。MV制作は数ヶ月で納品までいくので、ずっとテンションを高く保ったままできているのかなと思いますね。

─ちなみに「今日1日オフです」と言われたら、何をしますか?

「ゼルダ」の新作(Nintendo Switch「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」)が出たので、それをやりたいです(笑)。

─リセットでもあり、インプットでもあるゲームをプレイするということが、マザーファッ子さんの整え方なのかもしれないですね。

そうかもしれないです。

Photography_Hiroshi Nakamura, Text_Chie Kobayashi


ABOUT AUGER®

忙しい朝も、穏やかな夜も、人間らしさを取り戻す。身だしなみを整える時間は、自分と向き合う時間でもあります。自分の心に触れて日常を整えると、普段の何気ない時間が愛おしくなる。AUGERが提供したいのは、暮らしを「整える」心地よい豊かな時間です。

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