ART

ミニ四駆×AUGER=マスク!? Funny Dress-up Labが作り上げたアートピースのこと

ゼロからイチへ、オリジナルなものを作り出していく、その前段階。クリエイターたちはどういった過ごし方をしているのだろうか。自分と向き合うこと、そこから生まれる歓び。その向き合う直前にある時間/行為こそ、知りたくなる。

AUGERの世界観をモチーフとして制作された今回のコラボレート作品は、ミニ四駆のドレスアップステッカーのみを加工せずに使用したコラージュ作品を制作するアーティスト、Funny Dress-up Labによるもの。作家のシグネチャーとも言える「MASK Series」をもとにした作品がここに完成した。同作品に込めた思いから、「自分と向き合う」行為/時間についてまで、京都のアトリエで訊いた。

—今回のコラボレート作品について、コンセプトや意図から聞かせてください。 

今回はMASK Seriesでの制作ということで、どんな仮面を制作するかを考えているときにAUGERのパンフレットの中に「既成概念を穿つ」という言葉を見つけて、そこにグルーミングに対するAUGERの意思を感じました。その意思を貫く姿勢から反骨精神というか、現在のグルーミングに対して新たな価値観を創造するという抗いを表現できればと考えました。そこからAUGER製品を見ていくうちに、ヘアデザインコームの形状がモヒカンっぽいからそれを形にしたいなと思ったのと、カミソリの刃の部分が未来感もあって、今までのMASK Seriesにはない素材なので使いたいなと。そのあたりを出発点として、それぞれの製品の特徴をどのように活かして制作を進めるかに意識を切り替えていきました。実際にAUGERをいろいろな角度から見たり触ったりして、「こんな仕組みなのか」「ここの角度カッコいいな」と探っていった感じです。

—制作に取り掛かる際に、最初にイメージ図などを作ってから組み上げていくのですか?

そういったものはまったくないですね。作りながら、向き合いながら、です。カミソリのハンドル部分は、当初、仮面の髪の毛みたいにしたいなと思ったのですが、重量の問題などもあって、西洋の鎧のような形になるよう変更しました。あと、ハサミはイヤリングみたいにして、ネイルファイルは形がカッコよかったので手裏剣っぽくしたかった。実際は取り外しできないですけど、(ウルトラセブンの)アイスラッガーみたいに武器として使えたら面白そうかなと(笑)。

MASK Seriesを作りはじめた経緯としては、マスクって世界各国、それぞれ地続きじゃないのに作られている、という不思議な面がある。かつ、日本だとウルトラマンや仮面ライダーといった変身願望にもつながる。そこが興味深いなと。

—組み上がったのちに、全体を黒に塗装する工程を経て、ドレスアップステッカーを貼っていくことになりますが、ここも即興的に?

そうですね。「ここにはあのステッカーがいいな」と感覚的に出てくるので、それを探しながら、ですね。20年くらいやっていて、ようやく全種類が頭に入ってきましたね。どのステッカーがいいか、探しながらのときもありますけど。

—MASK Seriesでいうと、ステッカーがシンメトリーに配置されていますよね。

シンメトリーではあるんですけど、大量生産されたものって必ずしもプリントやカッティングの位置が一緒ではない。なので、多少のズレが出てくるという面白さはあります。

—実際にAUGERを作品に取り入れてみて、どうでしたか?

今までミニ四駆のパーツ以外を作品に取り入れることはなかったので、これまでのMASK Seriesとはまた違ったものになって面白かったですね。とくにカミソリのハンドル部分が重量あったので、実際にかぶったときに、どうしてもしなりやすくなる。それを補強するために(プラモデルの)ランナーという枠部分を裏側に入れていたりします。通常のMASK Seriesだとミニ四駆のパーツだけなので、あまり重量を気にしなくていいのですが。そこは新しい挑戦でしたね。

—AUGERの印象についても聞かせてください。

ガジェットとしてカッコいいな! というのが最初の印象でした。ツメキリ(M Revolver)の持ち手の部分を返す動きだったり。実際に爪を切る感触もめちゃくちゃ気持ちよかった。TAMIYAのニッパーも、ミニ四駆のパーツを切ったときの感触がすごく気持ちいいんですけど、それと似た感じというか。毛抜きも、先がずれないようにされている機構があって、普段使っているものよりも力をいれずに細かいところまで掴めるなというのは使っていて感じました。僕自身、あまりグルーミングに対しての意識が高くはないので、良いものを使いたいなという思いはなかったのですが、AUGERの製品には使ってみたいなと思わせる見た目のカッコよさという導入がありましたね。 

—「整える」ための日々のルーティーンなどがあれば教えてください。

日々のルーティーンとは少し違うかもしれませんが、制作する上で言うと、1日の制作を終えたら次に気持ちよく制作できるように、いつもの場所に道具を置いておくこと。そして制作に着手する前にはウェットティッシュで指先の汚れと油分を拭き取ること。そこだけやっていれば、集中して作業に取りかかることができます。あと、制作中はアニソンか何度も見ているアニメを流しておくこと。これが制作する上でのルーティーンですかね。

—アニメの音声をBGMがわりに、という?

そうです。アニメを流しっぱなしにしていて、セリフだけ聞こえてくる状態が無心になれる。「攻殻機動隊」「カウボーイビバップ」「新世紀エヴァンゲリオン」あたりが定番ですね。

—「自分と向き合う」という行為/時間については、意識的ですか?

はい。意識的にそういった時間を取ろうとはしています。必ずしもその時間が、自分と向き合うことにならないこともありますけど。意識しておかないと、日々が流れて終わっていってしまうので。

「自分と向き合う」行為自体は、その時々の自分の「らしさ」に気付くこと、ですかね。「自分らしさ」ってよく聞く言葉ではあるけれど、その「らしさ」ってちょっとしたタイミングで変わることだと思うんですよ。最終的に、死ぬときが最後の自分らしさであるというか。向き合う時間をちゃんと持つことで、「今の自分ってこういう感じなんだな」とか、「なぜ今、これにすげえイライラしているのか」とか、それを俯瞰して、探って、その流れから「ああ、なんか今、こんな作品制作してみようかな」というきっかけになったりもします。

—作品の制作中は自分と向き合っている感覚ですか? あくまで作品と向き合っている?

どっちもなんですよね。というか、基本的に無に近い。「こう貼っていきたい」という意識よりも、自動筆記(オートマティシスム)に近い。「こういった出来上がりにしたい」というイメージがあったとしても、最終的に違った形になっていたりもする。それはそれでいい。

あと、制作当初にはなかった思いとして、ミニ四駆って亡くなった親父を思い出すツールでもあるんです。親父とミニ四駆をやっていた記憶を、ステッカーを貼っているときにふと思い出したりする。「これ終わっちゃったら、親父を思い出すきっかけが減るのかな」とか、そのあたりはすごく考えますね。そういう個人的な思いも、歳とともに作品に入ってくるようになりました。

—「世の中にあるドレスアップステッカーを使い切った時、制作は終わりを迎える」と掲げていますもんね。

はい。最初、ホットショットJr.を買ってもらって作ったのをめっちゃ思い出すんですよね。幼稚園か小学1年くらいだったと思うんですけど。日曜日で、親父が新聞紙の上で足の爪を切っていて、その横でホットショットJr.を初めて作る、という光景がフラッシュバックみたいな形で入ってくる。

—では最後に。Funny Dress-up Labさんにとっての「整える」とは?

最終的に起こす行動の前準備、何かの行為に辿り着くまでの行程ですかね。制作はもちろん、どこかに行く、ご飯を作るなど、それぞれの行為に対してどのように準備をするかというのも「整える」と言えるんじゃないかなと。 その準備の部分を整えておくと、スムーズに事を成せる。なので、そこはすごく重要だなと思いますね。制作していくなかでも、感情的にバーッとやっちゃうと、わりとミスることが多い。最近はもうないですけど、最初は下準備を端折っちゃったりすることもあったので。楽せずに「ちゃんとやろう」ということに尽きますね。

Funny Dress-up Lab(ファニー・ドレスアップ・ラボ)
1978年生まれ。千葉県千葉市出身。京都府在住。
本来ミニ四駆をドレスアップする為に生産、販売されていたドレスアップステッカーが持つ、鮮やかな色彩、独特な形状、版ズレ、デッドストックであるという様々な面に魅了され、ドレスアップステッカーのみを加工せずに使用したコラージュ作品を制作している。世の中にあるドレスアップステッカーを使い切った時、制作は終わりを迎える。
Instagram:@fxdul

Photography_Masahiro Yoshimoto, Edit&Text_Takuya Nakatani(DEGICO)


[展示情報]

AUGER IN KYOTO

“自分と向き合う”ことで生まれる創造性をもとに、刺激的な表現を生み出すアートプロジェクト「AUGER ART ACTION」をはじめ、これまで多くの気鋭のアーティストとのコラボレーションを行ってきたAUGERが、このたび京都の地で、これまで制作されたAUGERをモチーフとしたアート作品を一挙公開。AUGER×Funny Dress-up Labのアートピースも初披露されます。

[会期] 2023年9月30日(土) – 10月9日(月・祝)11:00 – 18:00 ※入場無料
[会場] 世界倉庫(京都市下京区富小路通高辻上ル筋屋町144)

[個展情報]

Funny Dress-up Lab『How do you gaze at the wall in front of you?

● 東京・八丁堀
[会期] 2023年10月13日(金) – 10月28日(土)
13:00 – 18:00 / 休廊:日曜 / 入場無料
*PREVIEW:10月12日(木)19:00 – 23:00 @ スナックCENTER
[会場]CENTER/EDO(東京都中央区八丁堀2-21-12)

● 香川・高松
[会期] 2023年11月11日(土) – 12月18日(月)
13:00 – 18:00 / 休廊:火・水・木曜(祝日は営業) / 入場無料
*OPENING RECEPTION:11月11日(土)18:00 – 22:00
[会場] CENTER/SANUKI(香川県高松市常磐町1-6-13)

http://center.degico.jp


ABOUT AUGER®

忙しい朝も、穏やかな夜も、人間らしさを取り戻す。身だしなみを整える時間は、自分と向き合う時間でもあります。自分の心に触れて日常を整えると、普段の何気ない時間が愛おしくなる。AUGERが提供したいのは、暮らしを「整える」心地よい豊かな時間です。

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